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支払督促について
石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)
こんにちは。FPの石井裕之です。
支払督促とは、「申立人の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度」です(政府広報オンライン)。詳細な証拠集めは不要で、支払督促申立書に必要事項を記入して簡易裁判所に提出すれば、自分に代わって裁判所が支払いの督促をしてくれます。弁護士に依頼する必要はありません。
もとより個人間の取引は、たとえばインターネットでの中古品売買では、(購入代金支払い後に商品を発送する仕組み以外だと)商品を送ったのに代金が支払われないとか、あるいは貸したお金を返してもらえない、家賃が支払われないなど、トラブルの可能性と紙一重。さらには相手方に開き直られてしまうと、被害者である側が苦しい立場に追い込まれてしまうことすら、無いとは限りません。
そのような場合の手段としては、民事訴訟や、少額訴訟(60万円以下の場合)、民事調停などもありますが、支払督促には次のような特徴があります(政府広報オンラインから)。
・手続きは書類審査のみで行われ、裁判所への出頭や証拠提出は不要。
・裁判所に納める手数料は訴訟の半分。
たとえば100万円の支払いを求める場合、民事訴訟だと10,000円なのに対して、支払督促は5,000円です。(なお、この費用も相手方への請求に含められます。また、支払いが遅延している間の利息設定も可能です)
・相手方の言い分を聞くことなく、申立人の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が金銭の支払いを命じる。
・「仮執行宣言付支払督促」により、強制執行の申立ても可能。
すなわち、相手方からの異議申立てがなければ、判決と同様の法的効力が生じます。
裁判所からの督促だと、訴訟ではなくてもプレッシャーがかかるでしょうし(相手方が慣れているならともかく)、法的な手続きをとることで、交渉上の武器にもなります。
支払督促では、契約が本当に成立しているのか、代金は支払われていないのか、などのチェックはされません。もし架空だったら相手方が異議申立てをするはずだからです。異議が申立てられると、訴訟に移行して争うことになります。その場合にはもちろん証拠提出なども必要になります。つまり支払督促の段階では、裁判所は申立てが正しいか否かは判断せず、相手方に委ねるのです、
それゆえ、この制度を悪用した詐欺事件も起きています。取引や借金など無いのに利用し、異議申立てがあると取り下げるのです。結果的に裁判所が詐欺に加担する形になってしまうので注意喚起もされていますが、法律に基づいた手続きだけに根絶は難しいのが実情のようです。
だからといって、「どうせ詐欺だろう…」と放置すると大変なことも。仮執行宣言付支払督促へと進み、やがて強制執行が行われてしまいます。督促に対して異議申立てをしないと、相手方の言い分を認めてしまうことになるから。裁判所は督促を無視した人を守ってはくれないのです。強制執行されてしまうと、取り戻すのは容易ではないかもしれません。
さらに注意点として、東京の場合、簡易裁判所が所在する中央区霞が関ではなく、支払督促関係の事務所がある墨田区錦糸町の住所から届くので、支払督促自体を疑わしく思う方もいらっしゃるかもしれませんし、実際に詐欺である可能性もゼロとはいえません。
結局、対応としては、裁判所名義の郵便物は必ずチェックし、かつ、ホームページ等で裁判所の連絡先を調べたうえで問い合わせをする(郵便物に記載の連絡先ではなく!)のが、面倒ではありますが無難ということになります。便利な世の中になった反面、新たに厄介なことも生じたというべきでしょうか。
それでは、また次回。
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