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バーベル戦略とその応用

(2024年6月掲載)

石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)


こんにちは。FPの石井裕之です。

バーベル戦略とは、勉強熱心な方はご存じの通り、ハイリスク・ハイリターンの資産とローリスク・ローリターンの資産を組み合わせる投資手法のこと。リスクを最小限に抑えながらリターンの最大限化を目指すもので、リスクの両極端を組み合わせるイメージが、重さが両端に集中しているバーベルの形を連想させることが由来となっています。

たとえば債券投資であれば、残存期間長期と短期のものを組み合わせる、もしくは、利回りは低いけれど安全な国債と、その逆のハイイールド債を組み合わせるといったイメージになります。安定性を確保しつつ、収益を期待するもので、組み合わせる割合は、その人の状況(年齢・保有資産状況など)やリスクに対する考え方によっても変わります。

株式投資も同様で、具体的な組み合わせ例として、ハイリスク・ハイリターン銘柄として半導体関連、ローリスク・ローリターンで銀行株を提唱する専門家もいます。

話は変わりますが、最近、独立や転職に関するご相談をお受けする機会が増えています。ジョブ型マネジメントへの移行がひとつの契機なのかなと勝手に推測しています。

バーベル戦略の考え方は、実はキャリアにも応用できます。その模範として、20世紀最高の物理学者(とウィキペディアにある)アインシュタインの例があります。

アインシュタインがノーベル賞を受賞する契機となった論文「光量子仮説」は、ベルンの特許庁で審査官の仕事をしていた時の余暇時間に書かれました。発表当時は、素人が書いた論文ということで専門家からは無視されたものの、著名な物理学者が支持を表明したことで徐々に認められるようになったそうです。

ここでのアインシュタインは、安定的な収入が得られる堅実な仕事に就きながら論文を執筆して、ノーベル賞を受賞しました。仮に論文が日の目を見なかった場合でも、損失は時間と原稿用紙代とインク代くらいです。空想の話になりますが、もし特許庁を退職して書き上げたとしたらどうだったか。同じ結果になったとしても、心理的には追い詰められていたかもしれません。

ハイリスク・ハイリターンの例に限りませんが、前回も紹介した山崎元さんは、生前「サルの木渡り」を唱えていました。サルは木渡りする際に、必ず新しい枝を掴んでから前の枝を放すのだそう。でないと、いかにサルが木渡りの名手であっても落下してしまうという趣旨のようです。12回もの転職をされた引く手あまたの人材だった山崎さんでも、この考え方を実践していたそうです。当然ご存じだったであろうバーベル戦略の考え方がヒントになっていたのかは、わかりません。

同列に語るのは甚だ僭越ながら、かくいう私も、実は会社員の頃から時折ハローワークに通っておりました。自分の年齢やスキルだと世間ではどのような仕事があり、どのような待遇なのか、いわば世間の風を知ることが目的で、正直、厳しい現実を痛感したものです(ハイリターンの仕事だけを探したのではありません、念のため)。今振り返ってみても、会社員であるうちに行っておいて良かったと思います(ハローワークインターネットサービスで調べる方法もありますが、求職者の方々の中で雰囲気を体感したいという思いで足を運んだものです)

今の時代、会社員がローリスクとは言い切れませんが、それでも、独立をお考えの方は今のうちに慎重な(かつ慎重すぎない)キャリアプランのご検討をお勧めします。その際、キャリアアドバイザーへの相談が利用できる方は、ぜひプロのアドバイスも参考にされてみてはと思います。

それでは、また次回。