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奨学金と大学進学の意義

(2023年4月掲載)

石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)


こんにちは。FPの石井裕之です。

今回は、政府がマスク着用を「個人の判断」に変更した直後に書いていますが、案の定、現時点では着用継続の方が多いようです。たぶん外す人が増えたら変わるのでしょう(私もですが)。改めて「同調圧力」の強力さを実感します。

ところで、労働福祉中央協議会が今月公表した報告書によると、奨学金の平均は、借入総額310万円、毎月返済額1.5万円、返済期間14.5年とのことです。また、返済が「苦しい」との回答が44.5%、このうち20.8%は「かなり苦しい」そうです。

英語の「scholarship」は、本来授与の意味で、貸与されるものではない由。しかるに日本の奨学金は、上記調査によると、給付がわずか2.0%なのに対して、有利子貸与は61.4%。ありていに言えば、教育費の借金です。

この奨学金、過去にも社会問題化していますが、これから一層の深刻化が心配です。その理由は大きく2つあります。

1つめの理由は、雇用環境の変化。

310万円を仮に10年で返済するなら、無利子としても年間31万円、月約2.6万円の返済額になります。今春、政府の要請もあって賃上げする企業は多いものの、物価高騰もあり、やはりこの返済は重いでしょう。しかも現在の貸与金利はコンマ以下ですが、これから上昇する可能性も否定できません。

そもそも奨学金は(住宅ローンもですが)、長期雇用や年功序列の時代にふさわしい制度といえますが、今はそのような環境下で働ける方ばかりではありませんね。

2つめの理由は、大学を取り巻く環境が厳しさを増していること。

諸種のデータから、18歳年齢人口の減少が予測されています。人口に関する予測はほぼ確定的といえ、となると一部の大学以外は入学者数増も期待薄です。

大学も、国公立を含めて経営である以上、この状況はもちろん認識しており、対策もとられています。その一つが外国人留学生の受け入れ。政府や自治体からの補助金が重要な収入源となっています。ただ、無制限には受け入れられないので、(大学でも最大限の経営効率化努力がされる前提で)学費の値上げやむなしとなるのでしょう。そうなると利用する奨学金も多くならざるを得ないケースが予想されます。貸与金利も上がってしまうなら二重苦です。

なお、これは信頼できる人から聞いた話ではあるものの、真偽は定かでないですが、大学教員(教授、講師など)の肩書が、お金で買える大学もあるのだとか。確かに、講義やゼミ等を担当しない名称使用の許可だけなら、学生に弊害はないですね。事実なら、大学もそこまで努力しているとみるべきなのでしょうか。

なので、これも私見ですが、次の場合は大学進学が望ましいとして、それ以外であるなら、進学の意義を今一度じっくり検証されてみてはいかがでしょうか。

1.医師になるために医学部へ進むなど、進路を踏まえた学ぶ目的が明確な場合

2.その大学卒という肩書(ブランド?)がほしい場合

3.純粋に学問を究めたい場合(とするなら、どのような論文を書いている、どういう先生の指導を受けられそうか、事前リサーチ要でしょうね)

4.大学で友人を得たい場合(徐々にリアル講義やコンパが復活すると期待し・・・)

今回はかなり私見を述べましたので、いろいろご意見おありかと。ただ、少なくとも「同調圧力」だけで進学し、20代前半で多額の借金を背負い世に出る事態を当然と考えるべきではないのでは、と思う次第です。

ちなみに学費を親が負担するなら、この事態は回避できます。その場合、親世代の老後資金を含めた生涯収支の検証が不可欠ですね(されているでしょうが)。

それでは、また次回。