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令和5年度税制改正のゆくえ、贈与税と相続税の一体課税は実現するのか?

(2022年11月掲載)

あおばコンサルティンググループ代表 田口 豊太郎(税理士)


こんにちは、税理士の田口です。

今回はここ数年ずっと議論されている「贈与税」と「相続税」を一体化させるという話題についてお話させていただこうと思います。

なぜ、「贈与税」と「相続税」を一体化させるという議論がされているか、簡単にご説明すると、

1. 高齢化で高齢世代に資産が集中している状況で、贈与税の税率が高いため積極的に若年世代に資産移転がしづらいため、制度の仕組みを改める必要がある。
2. 富裕層が定期的な生前贈与を行うことで、相続税の負担回避を行っている事実がある。3. 外国では、贈与や相続のタイミングにかかわらず税負担が一定で、意図的な税負担の軽減を防止する制度となっている。4. そのため、贈与税と相続税を一体化すべきであり、制度の見直しをする。 という流れです。

もっとくだけた表現ですと、

1. 富裕層は相続税対策として定期的な贈与を行うことで、結果として高額の相続税を減らすことができる
2. 庶民は定期的な贈与を行っても、その効果は薄い
3. 庶民の不公平感を是正する

ということになります。

令和2年に当時の税制調査会の会長が「贈与税」と「相続税」の一体化に向けて発言し、その後の税制改正の検討事項として毎年議論が行われておりました。私も昨年末の税制大綱では「贈与税」と「相続税」の一体化の内容が具体的に織り込まれるのではと思っておりましたが、それはありませんでした。

具体的にどのような改正が行われるかわかりませんが、一番気になるポイントは、年間110万円までの贈与が非課税となる、「暦年贈与」の制度がどうなるかということではないかと思います。

この点については、過去の税制調査会メンバーから、廃止についても縮小についても否定的な発言が出ていますので、改正は行われない可能性は高いです。もし改正が入るとすると、「贈与財産の加算」の期間を長くする改正を行うのではないかということです。

「贈与財産の加算」とは、相続開始前3年以内に贈与した財産がある場合には、その財産を相続財産に加算して、相続税を計算する制度のことです。

近い将来に相続が発生しそうということで、相続税対策として贈与を行うことで意図的に相続税を減らすことを防止している制度ですが、相続開始前3年以内という期間を、例えば5年とか10年にすることで、贈与による相続税の節税効果を低減させることが税制改正の狙いです。

もし贈与財産の加算の対象期間が10年というような長期間になってしまうと、相当前から相続税対策を行う必要が出てきますので、1日でも早いタイミングでの対策着手が必要になってくることになります。

まだ実際にどのような改正が行われるかわかりませんが、少なくとも令和4年中の贈与については従前の法律が適用されます。もし生前贈与をお考えてあれば、今年も残り少ないですが、一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。では