サイト内の現在位置
サブリースの落とし穴
石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)
こんにちは。FPの石井裕之です。
サブリースとは、法人(サブリース会社等)がマンションやアパートをオーナーから借り上げて転貸する仕組みのことで、入居者からの家賃と、オーナーに支払う賃料との差額がサブリース会社の利益となります。株や為替、金などが軒並み高騰している中で、運用手段としてオーナーになることへ関心を寄せる方もおられるようです。
タイトルに「落とし穴」とつけましたが、決して悪い商品ではありません。利回りだけではなくリスクについてもしっかり認識しましょうという趣旨です。
オーナーにとってのサブリースのメリットは、
・入居の有無を問わず一定の賃料が支払われるので収入が安定する
・入居者の募集・管理をサブリース会社が行うので煩わしさがない
・サブリース会社のノウハウのもとで物件のメンテナンスが行われる
など、多くの魅力があります。
一方で注意点。投資の大原則として、こちらも留意すべきです。
1.オーナーの受取額は入居者が支払う額よりも少なくなる
サブリース会社は入居者の募集・管理や、建物・設備の不具合対応を行い、さらには借主として、空室でも賃料支払義務があることから、その対価として、入居者が支払う家賃の概ね10~20%を「取り分」とします。管理のみを委託する場合が5%前後なのと比べると2~4倍になります。
また入居者が退去した場合、一般的に1~3か月程度の「免除期間」が設けられます。修繕をして、次の入居者が決まるまでオーナーへの支払いが免除される期間ですが、これが長く設定されるケースがあり、もしオーナーが物件建設費のローンを目一杯に組んでいると返済に窮する場合も考えられます。
2.オーナー側からの契約解除が難しい
サブリース契約では、サブリース会社が入居者として借地借家法で強力に保護されており、オーナーは契約満了時に更新を拒否できない可能性があります。逆にサブリース会社からの契約解除は容易なので、突然オーナーの収入が激減する事態もありえます。私見ですが、借地借家法は借主の立場が弱いことが前提となっており、力関係が逆転するサブリースのような実態を踏まえた改正が必要なのではと思われます。
また、契約解除されないとしても、賃料引き下げを要請されるかもしれません。オーナーが拒否すると、サブリース会社は簡易裁判所に引き下げの調停を申し立て、裁判所が周辺相場などから決定する流れになります。不当な額ではないにせよ、当初見込んでいた収入が得られなくなる事態もないとは限りません。
3.建物や設備のメンテナンスが積極的に行われることが多く、費用の負担になる
メンテナンス費用は基本的にオーナー負担です。通常、外装塗装などの大きな支出は事前の修繕計画に盛り込まれますが、さらにサブリース会社は持ち出しを回避すべく常に満室にする必要があることから、メンテナンスに注力します(逆にオーナーは空室でも賃料収入があるので関心が高くない場合も)。入居者の退去時には原状回復義務がありますが、経年劣化は対象外。そのためサブリース会社は修繕費用についてオーナーへの承諾を求めますが、その際オーナーが事実上拒否できない規定となっているケースもあります。またメンテナンス業者がサブリース会社の関連会社の場合、費用面の妥当性にも注意が必要です。
サブリースのメリットは業者のサイトに詳しく掲載されているので、あえてデメリットを取り上げました。リターンがリスクを源泉とする点は投資の大原則であり、不動産も然り。不明点は前もって、納得するまで確認する姿勢が大切です。
それでは、また次回。
各種お問い合わせはこちら