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お勧めするキャッシュフロー表の作り方

(2024年2月掲載)

石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)


こんにちは。FPの石井裕之です。

昨年末からNECグループ社員向けの新たなマネープラン研修を担当しています。主に50代社員対象のため、60歳以降の再就労年収目標額を明確化することを目的に、キャッシュフロー表を作成するものです。

キャッシュフロー表は言うまでもなく家計収支管理の最も基本的なツール。企業や自治体でも作成しています。

キャッシュフロー表作成を難しく感じる方もいらっしゃいますが、エクセルでの簡単な表で十分です。基本的には次の内容を、ご自身が生きるであろう年齢(私は「想定寿命」と呼んでいます)まで記入します。

  1. 1. 表の上段 西暦や和暦と、家族の年齢(たとえば年末時点での)
  2. 2. 収入欄 手取り収入(額面金額から税金・社会保険料を引いた、いわゆる可処分所得)、将来の公的年金と企業年金DBDC見込額、個人年金やイデコ(あれば)、その他収入(保険満期金や株式配当、駐車場収入など、あれば)
  3. 3. 支出欄 生活費、住宅費(固定資産税、マンション管理費、家賃など)、住宅ローン返済額、教育費、支払保険料、その他支出(カーローンなど、あれば)
  4. 4. 年間収支2-3
  5. 5. 金融資産残高(現在の額+4

 

主な注意点としては、
2について
60歳以降の再就労収入は一旦ゼロに(そうすることで目標年収額がわかります)。
・配偶者の収入と合計での家計なら、配偶者分の2も記入。その場合、本人とは欄を分けた方が明解ですね。なお、配偶者も公的年金は必ず受給するはずです。

3について
・生活費は、毎月以外の支出もお忘れなく。例えば住宅ローンの賞与返済や、衣類をバーゲン時に纏め買いする場合など。
・同じく生活費は、子どもが社会人になっても、同居を続けて食事も一緒の場合などは、減少するとは限りません。
・持ち家に住み続ける場合の将来のリフォーム費用や、車が生活に不可欠なら買い換え費用も織り込みます。

以上で試算して、金融資産残高の推移を想定寿命までチェックし、ゼロ以上なら今のところひと安心そうでない場合は、想定寿命時点の不足額が60歳以降の再就労目標額となります。仮に1,000万円のマイナスであれば、60歳以降に年収100万円×10年または200万円×5年働くことなどで解消します。働き方の選択は本人と家族のワークライフバランスに対する考え方次第です。

ある研修受講者からは、ほとんど考えさせない内容だったとの感想をお聞きしました。実際ここまでは、いわば現状把握のための入力作業、ここからが考えるところになります。

巷では最初から将来の夢や目標についても考えさせるマネー研修が多く、それは正しくはあるものの、同時に難しいとの印象をもたれる要因ではという気がするのです。

金融機関などのライフプランセミナーでは、ゆとりある生活費(月額36万円)や、旅行・レジャー費用等の支出を多く見込んでもらい、その実現のために資産運用しましょう、投資信託を買いましょうなどというシナリオも見かけます。運用のスキルを磨くことは大切ですが、私はまず現状の延長線上で基本形を作り、応用はそれからとお伝えしています応用には運用や楽しい将来の想像以外に、不測の事態が生じた場合なども含まれます

なお、私は今後の物価上昇率等0%を前提としています。現状での把握が先決であることと、今後の上昇率を正確に見込むことは不可能だから。実際どの数字(過去データでさえ)も、結局は根拠にはなりません。気になるという方には、上昇率を1%と仮定して今後の数字の動き方を確認されるようお伝えしています。

最後に、キャッシュフロー表は定期的な検証をぜひ。健康診断と同じく、今後の変化に備えるには、毎年がベストです。

 

それでは、また次回。