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新型コロナと医療保険
石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)
こんにちは。FPの石井裕之です。
この夏の第7波における新型コロナ感染者数は26万人と、日本が世界トップクラスとなりました。素人考えでは、真面目な国民性ゆえにPCR検査等を受ける人が多い結果なのではという気がしますが、2021年春の第4波までが数千人規模だったのに対して、同年夏の第5波が2万6千人、そして今年初めの第6波は約10万人と、倍々ゲームを上回るペースで増加していることは事実です。
この状況が保険会社の予想を超えるものであることは間違いないでしょう。一例として一部の保険会社では、当初パンデミックをビジネスチャンスと捉えて新型コロナ向け保険を販売しましたが、多くは販売停止に追い込まれています。
生命保険協会ホームページによると、コロナが大問題化した2020年春に金融庁から、保険契約者等保護の観点から前例に捉われない柔軟な対応を求められ、保険約款の文言には形式的に該当しないものの特例措置として自宅療養等も支払対象とした経緯があるそうです。当初は感染者数が今ほど多くなかった(重症化リスクは高かったですが)ことも、自宅療養を「みなし入院」と扱えた背景にあるのかもしれません。
ところがその後、第6波、第7波と続き、2022年6月の国内生保の入院給付金支払額は、なんと2年前の100倍以上になったそう。私のように(実は7月下旬に罹患し自宅療養を余儀なくされました・・・)入院するまでもない軽症の「みなし入院」も相当多いのではと推測されます。
保険会社にとっては、近年の低金利による厳しい運用状況の下、この「みなし入院」はさらなる重荷になっているのでしょう。もし第8波、第9波と続くなら、経営体力の乏しい保険会社は経営不安すら生じかねません。
そこで保険会社各社は、入院給付金の支払い対象を次の場合に限定することとしました。
(1)65歳以上の人
(2)妊婦
(3)入院を要する人
(4)新型コロナの治療薬投与を要する人
生命保険協会が9月1日にニュースリリースし、各社は9月9日一斉にホームページ等で告知し9月26日から変更しました。見事な横並びですが、これは仕方のないことでしょう。先行して変更してしまうと確実に世論の集中批判を浴びるでしょうから。
また、入院給付金請求時の提出書類も、併せて見直しが行われるそうです(すでに実施済みの保険会社もあります)。医療機関や保健所の療養証明書発行事務等の負担軽減が趣旨ですが、それだけではないようです。一部の県では、自ら抗原検査キットを購入し、ネット登録した人にも療養証明書を発行しています。発熱外来の逼迫を避けるための独自措置ですが、これも保険会社によっては「みなし入院」として入院給付金を支払います。医師の診断が無く、かつ居住する都道府県で請求可否が異なる状況となり(かつて無かったことでしょう)、さすがに行き過ぎ感を否めません。
ちなみに、保険料は「収支相当の原則」に基づいて算出されます。これは契約者全体が支払う保険料総額+保険会社の運用収入の合計額と、保険会社が支払う保険金総額+保険会社の運用経費等とが等しくなるように保険料が計算されるという原則です。となると、運用収入や経費削減に限りがあるとするなら、保険料が今後どうなるか、想像されますね。医療保険加入・見直しを検討されているなら、急いだ方がよいかも。保険会社によっては、今後の感染状況次第では販売停止すら、絶対ないとは言い切れません。
それでは、また次回。
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