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令和6年分の所得税確定申告における注意点

(2025年1月掲載)

あおばコンサルティンググループ代表 田口 豊太郎(税理士)


こんにちは、税理士の田口です。

今回は、令和6年分の所得税確定申告における注意点について書かせていただきます。
前回のメールマガジンで触れた内容と一部重複する点もありますが、大切なポイントなので改めて詳しく解説いたします。

1.上場株式等の譲渡益や配当金がある場合の申告について
上場株式等の譲渡益や配当金がある場合でも、特定口座で「源泉徴収あり」を選択していると、通常は確定申告が不要です。しかし、繰越譲渡損失を活用する場合には申告が必要です。
この際、以下の点に注意してください。

●扶養控除が受けられなくなる可能性

申告により所得が発生すると、扶養から外れることがあります。これにより配偶者控除、扶養控除、障害者控除などの各種所得控除の適用を受けられなくなる可能性があります。

●国民健康保険料や後期高齢者医療保険料が増加する可能性
申告後の所得が保険料計算に反映されるため、保険料が上がる可能性があります。

医療費の自己負担割合が増加する可能性
所得が増えることで医療費の負担割合が変わる場合があります。

(具体例)
令和5年に上場株式等の譲渡損失が300万円あり、確定申告でこの損失を繰り越したとします。
翌年の令和6年に譲渡益が350万円発生したため、確定申告を行い、繰越損失300万円と相殺をして申告をすると、税金の還付は受けられますが、申告により令和6年には350万円の所得が発生したことになります。
その結果、扶養控除や配偶者控除等の所得控除の適用から外れ、また、国民健康保険料等の計算でもこの所得が反映されるため、保険料の増加が予想されます。なお、国民健康保険料や後期高齢者保険料の計算では、繰越損失と相殺したあとの50万円部分が反映されることになります。

目先の税金還付だけにとらわれず、扶養控除の適用可否や保険料負担なども総合的に考慮して、確定申告を行うかどうか判断してください。

 

2.保険の満期返戻金や解約返戻金がある場合
保険契約が満期を迎えたり、解約したりした場合には、一時所得として課税対象になる場合があります。この場合、確定申告を忘れると、後日税務署から申告漏れを指摘されることがあります。
税務署は保険会社から支払調書を受け取っており、「誰が、いくらの保険金を受け取ったか」を把握しています。申告漏れがないよう、十分注意してください。
また、これらの所得も国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定に影響を及ぼすため、申告内容を慎重に確認することが重要です。

 

おわりに
令和6年分の確定申告の期限は令和7年3月17日(月)となっています。
申告には余裕を持って取り組むことをおすすめします。ではまた。