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オルカンのリスク
石井 裕之
(CFPファイナンシャル・プランナ-)
こんにちは。FPの石井裕之です。
オルカンとはオール・カントリー、すなわち全世界の株式に投資するインデックス型投資信託のことで、本来は特定の投資信託の略称として商標登録されていますが、全世界型株式投信の総称の意味で呼ばれることもあります。
新NISA等で投資されている方はご存じのとおり、オルカンは1つの投資信託商品で世界中の先進国・新興国の株式に投資できるので、ある国の経済が不調でも、他の好景気国が支えてくれるという分散投資の効果が見込まれます。長い目で見れば世界経済全体は成長を続けるであろうとの見方の方には、格好の商品ですね。インデックス型はコスト(信託報酬)が低めなのも魅力です。
ただし投資である以上、オルカンにもリスクがあります。
まず、よくベンチマークとして使用される「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」は、世界の先進国23か国と新興国24か国が投資対象。文字通り全ての国ではないものの、世界株式市場の約85%がカバーされ、うち半数を占める新興国には今後の大きな成長が期待されています。
その反面、先進国では考えられないような政治的・経済的理由により、急落の恐れもあります。リターンとリスクは表裏一体なのが投資の大原則でしたね。
たとえば対象国のひとつ、トルコ。通貨トルコリラの対円為替レートをみると、2007年10月11日に1トルコリラ99.656円だったものが、2024年8月28日には4.071円と、激しい通貨安に見舞われています。
ということは、99.656円が前者では1トルコリラだったのに対して、後者では24.48トルコリラと、爆上がりになります。トルコは2025年4月時点のインフレ率が、緩和されたとはいえ38%と、経済が大混乱中。つまり、この場合の株価上昇は業績が良いためという真っ当な理由ではないのです。
他の国でも、ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、メキシコなどの中南米諸国や、中国、韓国、インド、フィリピンなど東南アジア、そして南アフリカ、中東や東欧など、なかには国家経済の脆弱性が報じられている国も。そして、どの国も現地通貨ベースでの株価指数は高値圏。オルカンによる資金流入も一因でしょう。
またオルカンとはいっても、米国株式の比率が6割近くを占めます(ちなみに新興国は合計で約10%)。ということは、S&P500ほどではないにせよ、今後の米国経済の状況に懐疑的な人はちょっと考えものです。
さらに為替レートは、教科書的には金利差や貿易収支、購買力平価などで決まると説明されますが、実際には政治的に強い国の意向がかなり反映されます。たとえばアメリカがドル安を強く望めば、日本の事情にかかわらず円高傾向になります。円高はすなわち、円建てでのオルカン基準価額の下落要因になります。
「ではオルカン投資はやめた方が良いの?」と聞かれると、(専門家のなかには実際そのような意見もありますが)私はやはり、最適な投資対象のひとつと思います。ただしリスクについての認識は必要というのが、今回の趣旨です。
最後に、日本の個人向け国債の変動金利型10年は有力な検討対象と考えます。半年ごとに金利が見直されるので上昇の恩恵が受けられ、かつ購入後1年経過すれば日本政府が額面で買い取る保証をしているので、国家破綻の場合以外は損もありません。もちろん為替リスクもゼロです。もっとも、2025年5月発行分の利率は、0.93%なのでこれだけでは物価上昇への対応は苦しいかも。あくまで分散投資の一つとしての、下支えの位置づけです。
それでは、また次回。
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