SPECIAL TALK#01
Introduction
多岐にわたる事業を展開するNECは、データセンター事業者という顔も持っています。そしてこのデータセンターの企画から設計・施工、運営・保守までを、NECの強力なパートナーとしてサポートしているのがNECファシリティーズです。高度な専門性、ノウハウが要求されるデータセンターの建設・運営ですが、現在、新たなデータセンターの建築が進行中です。ここでは発注者であるNECのデータセンター事業を統括する鈴木敦男氏と、NECファシリティーズのデータセンター建設案件のプロジェクトマネージャーの末松耕自氏の二人に、両社のデータセンターへの取り組みについて語り合ってもらいました。
Member
末松 耕自
Koji Suematsu
NECファシリティーズ
建設プロデュース事業部 建築設計部長
2009年の入社以来、一貫してデータセンター建設に関わる。専門は意匠設計。現在はプロジェクトマネージャー。
鈴木 敦男
Atsuo Suzuki
日本電気(NEC)
サービスプラットフォーム統括部 ディレクター
電気設備のプロフェッショナルとして、2013年にNEC入社。以来、データセンターの建設から運営・保守までを統括。
Part 1
末松
私たちが、現在取り組んでいるプロジェクトを話す前に、そもそもデータセンターとはどのような役割を担っているのか。読者の方々にお伝えしたいと思います。それによって、私たちの取り組みもより鮮明になると思いますから。
鈴木
そうですね。まず、大前提として企業によるITの利活用は、日々進化・拡大しています。ITと無縁のビジネスは考えられない。そして多くの企業には、システムやデータを安心、安全なロケーションで安定して運用したいというニーズがあります。そのニーズに応えるのが、サーバやネットワーク機器を収容した施設であるデータセンターです。
末松
IT・ネットワークを通じたサービスを提供している企業にとって、データセンターは不可欠な存在と思われますが、それら企業の先にいる一般消費者の方々も、データセンターの恩恵にあずかっていることになりますね。
鈴木
ええ、わかりやすいのは、たとえばECサイトやコンビニの物流・POS端末、銀行のATMなど、これらを利用するときは多くの場合データセンターを経由しています。ソーシャルネットワークも同様で、スマートフォンを開いてSNSやWebサイトにアクセスすれば、その時点でデータセンターを利用していることになります。
末松
今紹介したのはほんの一例で、社会経済活動の多くがデータセンターに支えられているといっても過言ではないと思いますね。このデータセンターにNECは事業者として関わってきましたし、私たちNECファシリティーズはNECから発注を受けて、企画から建設、運営までをサポートしてきました。現在も、神奈川と神戸で新しいデータセンターを建設中です。次にこれらのプロジェクトについて話してみたいと思います。
Part 2
鈴木
NECのデータセンター事業は、北海道や名古屋、広島、九州といった地域ごとに小規模なデータセンターを運営する一方で、「印西データセンター」や東日本、西日本それぞれのフラッグシップデータセンターとして「神奈川データセンター」「神戸データセンター」を建設・運営してきました。今回のプロジェクトは、「神奈川データセンター二期棟」「神戸データセンター三期棟」の新設となります。
現在のデータセンターはサーバの電源容量の拡大に加えて、ニーズの質的変化が生じています。脱炭素社会の実現に向けた高い電力効率の実現や再生可能エネルギーの利用、DX推進に伴うパブリッククラウド利用の加速に対応した接続性、セキュリティの確保など、企画の段階から、末松さんたちと検討を進めてきました。
末松
そうですね。データセンターのかねてからの大きな課題の一つに、大量のエネルギー消費がありました。これまでもさまざまな省エネルギー対策に取り組んできましたが、今回のデータセンターでは最高クラスとなるPUE(※)1.16を実現しています。また、100%再生可能エネルギーを活用するグリーンセンターとしたことも特徴の一つですね。
鈴木
一方、クラウド利用が進む中で、各種クラウドサービスとセキュアな閉域接続を可能としました。ロケーション、必要なクラウドサービスへの接続要件から最適な環境まで提供されています。進化するデータセンターの一つの形だと思います。 また、末松さんは、元々設計が本業ですから、建築の部分にもこだわりました。
末松
データセンターは堅牢でなければ存在価値がありません。地震や水害、停電、ネットワーク障害も含め、高い耐災害性を目指しました。もちろん、コストを見極めつつ、より優れた施設を追求しました。地震による予想最大損失額(PML)(※)を示す指標がありますが、たとえば金融業界で10%を求めているのに対し、1.2%という高水準を達成しています。
※PUE……Power Usage Effectiveness。データセンターの電力効率を示す指標。全体消費電力÷IT機器消費電力で、1に近いほど省エネ性能が高い。
※PML……Probable Maximum Loss。たとえば新築100億円の建物が、予想される最大規模の地震が発生した際、建物補修に10億円かかるとされたとき、PMLは10%となる。
Part 3
末松
私たちは鈴木さんをはじめNECのメンバーと、長年にわたってデータセンタービジネスに関わってきました。鈴木さんたちは立場として発注者となるわけですが、実際の現場は一心同体で取り組んできたと思います。そこで、客観的に見て、私たちNECファシリティーズへの発注の背景、評価をお聞かせいただけますか。
鈴木
末松さんも重々ご承知のように、データセンターの設計・建築は、通常の建物と異なり非常に特殊です。高い安全性は必須ですし、施設内は厳密な湿・温度の管理も要求される。冗長性も確保しなければならない。したがって、データセンターを設計・施工・運営できる企業は限られています。NECファシリティーズはデータセンターに関して蓄積してきた知見・ノウハウは、極めて優れていると思いますし、信頼できる技術力を有している。だから一緒にやってこれたのだと思います。
末松
ありがとうございます。設計から施工、施設管理までNECのデータセンターに精通していることはもちろんですが、内外販問わず多くの実績を残してきました。その積み重ねが、高い技術力に結実してきたと思います。
鈴木
2014年の「神奈川データセンター1期棟」のときも、独自の技術力を展開しましたよね。
末松
ええ、「神奈川データセンター1期棟」の建設は、半導体工場のコンバージョンでした。そこでNECファシリティーズが培ってきた半導体工場の設計技術を発展させた、独自の省エネ空調システムを採用しました。これは特許も取得。フラッグシップデータセンターとして、絶対に外せないコンセプトであった省エネに大きく寄与したと思います。
鈴木
NECファシリティーズの強みは、高い技術力を有していることだけでなく、企画の初期段階から設計、施工、施設管理まで、一気通貫のサービスを提供できる点にもあると思います。私はデータセンター業界に長く関わってきたからわかりますが、それが可能な企業は極めて少ないと思います。
末松
そうかもしれませんね。当社は、建築、機械、電気、インフラなどすべての領域に対してエンジニアを擁しており、当社のみで全体設計の対応が可能ですし、設計だけでなく調達、施工まで一貫したサービスを提供しています。さらに施設管理もアウトソースするのでなく、当社社員によるインハウスでの対応をしているのも大きな特徴の一つ。施設管理業務を行っている社員からのフィードバックがあり、PDCAをしっかり廻すことができています。
Part 4
末松
現在も進行している新設プロジェクトですが、一連の建設プロセスの中で、私たちNECファシリティーズと発注者であるNECがどのように関わり、プロジェクトを進捗させているのか、読者の方にお伝えしたいと思います。
鈴木
そうですね。一心同体とはいえ、それぞれ役割がありますからね。最初の企画フェーズですが、この段階からすでに末松さんたちは参画してもらっています。まず、我々NECがやりたいビジネスを立案。その後、施設ボリュームスタディやコスト、事業スケジュールをNECファシリティーズで試算し、データセンターの要件、ビジネスプランを私たちNECとともに練り上げていくことになります。そして、NECグループ内での事業承認を得ることが、企画フェーズの最大のマイルストーンです。
末松
ええ、事業承認を得た後は設計フェーズ。設計業務は明確に機能分担しており、一級建築士事務所であるNECファシリティーズがNECと業務委託契約を結び、設計を行います。基本設計、実施設計、施工調達において、基本はNECファシリティーズが各種検討、設計を行い、NECが内容確認の上、意思決定や承認を行う流れになります。
鈴木
その後の建設フェーズも同様で、NECファシリティーズが元請会社として施工を行い、NECは進捗確認やプロセスチェックを担当します。そして、最終の引受確認のフェーズへ。NECファシリティーズの優れたコンストラクションマネジメントが、プロジェクトを牽引する大きな力になっていると思います。
末松
引受前の各種検査、総合連動試験は非常に重要で、プロジェクトのハイライトの一つだと思います。データセンターは止めてはならない、それが使命ですから。この検査に関しては、鈴木さんたちと綿密な連携、相互確認を行って、徹底して問題を解消し、晴れて竣工を迎える。やはり竣工時というのは、苦労が報われた達成感があります。
鈴木
こうして一連の建設プロセスを見てみると、施工や調達ではNECファシリティーズは発注者の立場になりますよね。業者見積や見積査定、価格交渉など。企画段階に立てた事業予算達成のための重要な業務です。やはり我々は、契約上はともかく、実際の現場では、発注者と受注者の壁がない関係性の中で仕事を動かしていると思います。それがプロジェクトを成功に導く大きなファクターだと思います。
Part 5
末松
鈴木さんは、長年データセンターに携わってきていますが、この仕事のやりがいはどこに感じていますか。
鈴木
冒頭の発言に戻りますが、社会経済・生活を支える重要な社会基盤を担っていることにやりがいを実感しますね。ただ今回の新設のデータセンターに見られるように、データセンターの潮流も変わってきています。安全性・信頼性というデータセンターに不可欠な要素を損なうことなく、変化に追従し競合他社に負けない、より優れたデータセンターを生み出していきたいですね。
末松
NECにとって重要なビジネスであるデータセンター事業に、信頼されるパートナーとして貢献できることは、私にとって大きなやりがいです。先ほども指摘しましたが、データセンターは24時間365日稼働し続け、決して止めてはいけません。専門集団のプライドとして、それを持続させていくこと。その実践の中にやりがいを感じますね。鈴木さんは、今後のデータセンターはどのように変わっていくと考えていますか。
鈴木
今まで以上に、クラウド化が加速するのは間違いありません。オンプレミスからクラウドへ、大きな潮流になっていくと思います。今回の新設のデータセンターで導入したクラウドサービスへのコネクテッドはその潮流を見据えた取り組みでした。今後、既存のパブリッククラウド利用だけでなく、プライベートクラウドも登場してくると思われます。それらクラウドの進展に対してデータセンターが担う役割も変化してくると思います。
末松
新設の「神奈川データセンター」「神戸データセンター」は、国内のデータセンターの中で先進の機能、コンセプトを備えた施設だと思いますが、今後、さらに新しいものが要請されてくるのでしょうね。
鈴木
今回の新設のデータセンターは、次の新たなコンセプトを持ったデータセンターを生み出すための試金石になると思います。今年と来年にサービスインしますが、市場が我々のデータセンターにどのように反応し、評価するか。見極めていきたいと思っています。
末松
次世代を見据えて、さらに進化したデータセンターを生み出すために重要なのは、人の成長。人は財産ですから。今回のプロジェクトでも若手社員に重要な仕事を任せ、チャレンジの機会を提供しました。責任を伴いますから大変な部分もあると思いますが、自己実現や成長を実感できる環境であることは、自信を持って読者の方に伝えたいと思います。鈴木さん、本日はお忙しい中、貴重な時間をいただきありがとうございました。今後とも、よろしくお願い致します。