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株の儲けや配当金を申告する際に気を付けるポイント

(2024年11月掲載)

あおばコンサルティンググループ代表 田口 豊太郎(税理士)


こんにちは、税理士の田口です。

今回は、先日私の親族から受けた相談についてご紹介したいと思います。

私の叔父は、すでに仕事を引退し、年金を受け取りながら、病院やスーパーで清掃のアルバイトをし、悠々自適な生活を送っています。また、夫婦で株の売買を楽しんでおり、ネット証券を利用して取引をしています。たまたま昨年(2023年)、叔母が株の売買で儲けが出ました。

現在の税制では、株の売買益や配当金には約20%の税金がかかりますが、特定口座で売買を行い、配当金も同口座で受け取れば、税金は自動的に計算されるため、申告の必要はありません。

しかし、上場株の譲渡損がある場合、確定申告を行うことでその損失を3年間繰り越すことができます。つまり、赤字が出た年の翌年以降3年の間に利益が出れば、その赤字と相殺して税金の還付を受けることができるのです。

叔母も過去に赤字を繰り越していたため、2023年に得た株の譲渡益をその赤字と相殺し、20万円分の税金の還付を受けることができました。

ところが、最近になって叔父に税務署から手紙が届き、「確定申告に誤りがある可能性が高いので見直してほしい」という内容が書かれていました。叔父は年金とアルバイト収入をきちんと申告しているため、なぜだろうと不思議に思ったそうです。

実際の原因は叔父ではなく、叔母の株式取引にありました。叔父は叔母を扶養に入れており、年金収入が少ない叔母はその要件を満たしていました。また、叔母は障害者手帳を持っているため、叔父の確定申告では「配偶者控除」と「障害者控除」を適用していたのです。しかし、叔母が株の譲渡益を申告したことで扶養の範囲を超えてしまい、結果的に叔父の申告が誤っていたということになったのです。

扶養の判定基準は、その年の所得金額です。繰越の赤字と譲渡益を相殺しても、扶養判定は相殺前の所得で判断されます。そのため、叔父は確定申告を修正し、追徴課税として約20万円の税金を納めることになりました。

一見すると、叔母が20万円の税金の還付を受け、叔父が20万円の税金の追徴を受けたため、結果としては差し引きゼロに思われるかもしれません。しかし、実際には叔母が譲渡益を申告したことで、国民健康保険料や介護保険料が増え、最終的には損をしてしまったのです。

 

上場株の譲渡益や配当金は、特定口座内で源泉徴収ありの運用を選択すれば申告不要です。赤字と相殺する手法もありますが、トータルで得になるかは慎重に検討する必要があるということを、ぜひ覚えておいてください。