エスペック株式会社様


サイト内の現在位置
主力の試験所を最新設備に大規模リニューアル
環境試験受託事業のワンストップ対応に貢献
環境試験器の世界トップメーカーのエスペック様は、ニーズが高まっている車載用電子機器の受託試験事業強化のため、豊田試験所をリニューアルオープンしました。このリニューアル工事を担当したのがNECファシリティーズです。建築、電気、設備等幅広い分野の作業を総合的にマネジメントし、短期間でリニューアルを完了しました。最新設備を備えた豊田試験所は、グローバルな試験規格などにも幅広く対応可能。エスペック様はこの強みを活かし、受託試験事業の更なる拡大を目指しています。
課題背景
- グローバルな試験規格への対応力強化のため、試験所を短期間でリニューアルしたい
- 試験所が第一種住居地域にあるため適切な騒音対策を施したい
- 既存設備の受託試験をできるだけ止めることなく、工事を進行したい
成果
納期順守
試験エリアの改修、空調や分電盤の整備、壁面の美装化まで試験所の全面リニューアルを短期間で完了
第一種住居地域の規制をクリアした騒音対策
100dB以上の騒音が発生する複合振動試験用に専用防音室を整備。排気の消音対策も実施したことで稼働前と同等の騒音値に
既存の受託試験の稼働を止めずにリニューアルを実現
施工エリアを複数ブロックに分け、段階的に施工することで、既存設備での受託試験を進めながらリニューアルを実現
導入ソリューション


お客様の立場にたち、事業計画の把握から、課題の抽出や整理、実際の設計・構築、さらには運用・アフターサポートに至るまでワンストップで対応。これまでに蓄積してきた工事の完成・運用まで技術と情報、マネジメント力を駆使し、納期の順守と品質の確保を徹底的に追及している。
導入前の背景や課題

取締役
執行役員
テストコンサルティング本部長
浜野 寿之氏
多様化する試験規格への対応とワンストップ試験のニーズが拡大
エスペック様は多彩な製品・サービスで環境試験のトータルソリューションを提供しています。環境試験とは、温度・湿度などさまざまな環境因子が製品に及ぼす影響を分析・評価し、その耐久性や信頼性を確認するための試験です。同社はそれを実施するために必要な試験装置である「環境試験器」を日本で初めて開発したパイオニア企業。現在は世界シェア30%以上、国内シェア60%以上を誇る環境試験器のリーディングカンパニーです。
同社は装置の製造販売に加え、その点検・保守サービス、顧客に代わって試験を行う受託試験サービスなども展開しています。「近年はこの受託試験のニーズが高まりを見せており、これを今後の事業の柱の1つに成長させたいと考えています」と話すのは同社の浜野 寿之氏です。

テストコンサルティング本部
中日本試験所 所長
鈴木 智也氏
環境試験は温度や湿度、振動や圧力などさまざまな環境因子を人工的に再現する必要があります。環境試験器のトップメーカーである同社は、その試験環境づくりに独自のノウハウを持っています。「例えば、温度変化に対する耐久性を調べる場合、冷却水を流すだけでなく、その温度や流量まで細かくコントロールすることが可能です。定型の試験項目だけでなく、お客様のさまざまな要求に柔軟に対応できる。これが当社の受託試験サービスの強みです」と同社の鈴木 智也氏は話します。
受託試験のニーズの高まりには、事業を取り巻く環境変化が大きく影響しています。「豊田試験所を開設した2006年当時、受託試験を依頼されるお客様は電気・電子業界が中心でしたが、近年は自動車業界のお客様が非常に増えています。自動車の電動化・自動化が進み、車載機器や車載用バッテリーなどに電気・電子部品が数多く搭載されるようになったことがその背景にあります」と浜野氏は説明します。
さらに自動車産業におけるグローバル化の加速も大きな要因です。部品のグローバル調達が進むとともに、燃費や環境性能に優れた日本車は海外でのプレゼンスを高め、市場も拡大しています。これに伴い、試験内容も国際規格への対応が強く求められているのです。例えば、車載用電気・電子機器の信頼性を評価する国際規格「ISO 16750」に加え、これをベースにした新規格「ISO 19453」が策定され、ハイブリッド/EV自動車の部品は対応が必須となっています。ドイツ自動車メーカーにより作成された業界規格「LV124」、中国国家標準規格となる「GB」規格への対応も避けられません。
試験設備も、実車走行状態を模擬したさまざまな試験を一連の試験として実施するシリーズ試験への対応や試験サンプルの大型化への対応が必要となってきています。「多様な国際・業界規格を把握し、お客様自身で試験環境を整えるのは、大変な手間とコストがかかります。これを一括でアウトソースし、なおかつ多様な規格試験を1カ所で行いたいというニーズが高まっています」と鈴木氏は述べます。
こうしたニーズに対応するためには、自社製品以外の試験機も導入し、試験の種類やバリエーションを拡充する必要があります。「そこで主力拠点の1つである豊田試験所をリニューアルすることにしたのです」と浜野氏は経緯を語ります。
選択のポイント

中部支社
営業部 主任
兼 環境・建設部 主任
兼 FM部 主任
鈴木 直哉
メンバーの密な連携によるチーム力と迅速・的確な対応力を評価
同社は愛知県豊田市および刈谷市、栃木県宇都宮市など国内に5つの受託試験所を展開しています。このうち、豊田試験所は延床面積が最大規模で、評価項目が多岐にわたる車載用電子部品に特化した試験所です。これがリニューアル拠点として豊田試験所を選定した理由ですが、同試験所のあるエリアは近隣に住宅や公園などがある第一種住居地域。「今回、大型装置を導入することを計画していたため、試験を行う上での安全性や試験装置から発する騒音、振動など周辺への環境対策も不可欠でした。豊田試験所は開所から10年以上経過しており、設備増強に加え、空調や内装の手直しも必要でした」(浜野氏)。
こうした要件に対応するリニューアル工事事業者として、同社が選定したのが、NECファシリティーズです。
決め手になったのは、これまでの実績と迅速・的確な対応力です。NECファシリティーズは2006年に開所した横浜試験所の設備工事、2018年に実施した刈谷試験所の大規模改修工事を担当した実績があります。「刈谷試験所の工事では、NECファシリティーズに現状設備の老朽化調査、改修工事の提案を依頼しました。専門性の高い施設や装置が多い中、担当者はそれらの役割や機能を素早く調べ、こちらの意図をくみ取った期待を超える提案をしてくれました。レスポンスの速さと丁寧な対応は強く印象に残っています」と鈴木氏は振り返ります。

中部支社
環境・建設部 主任 (一級建築士・ 建築設備士)
水野 利治
手厚いアフターフォローも評価しました。「工事が終わった後もサポートを欠かさず、消費電力の削減策などについて、論理的かつ具体的な提案をしてくれました。作って終わりではなく、その後も誠実に対応してくれる。そういう文化を実感しているため、今回も安心して任せられると判断しました」(浜野氏)。
今回のリニューアルでは、自動車部品などの信頼性・耐久性を評価する大型の複合振動試験機を導入することが決まっていました。これは重量のあるステージを縦揺れ、横揺れ、およびその複合的な動きをさせ、同時に温度・湿度の負荷もかけるという過酷な試験。その動力源からは、自動車のクラクション音に相当する100dB以上の騒音が発生します。「第一種住居地域ではこれを日中50dB以下、夜間40dB以下に抑えなければなりません。大型試験品の搬入・搬出をやりやすくし、試験員が働きやすい環境を実現することも目指しました」と鈴木氏は語ります。
リニューアルする豊田試験所は、稼働中の受託試験施設。試験所を利用される顧客のスケジュールに配慮する必要があり、受託試験業務を止めることはできません。しかも、リニューアル開所式の日程は事前に決まっていたため、それまでにすべての工事を完了させる納期厳守も絶対条件でした。
こうした要件を満たすためには建築や電気、設備、また今回は特に騒音等の幅広い見識が求められます。そこでNECファシリティーズは、メンバーが密に連携し、チーム一丸となってリニューアルに挑みました。
NECファシリティーズの鈴木 直哉は、次のように振り返ります。「施設はお客様の立場にたち、構築する。これが私たちの活動の原点です。コストを圧縮し、限られた期間でいかに最大の効果を上げるか。営業と技術部門が連携して、計画ヒアリングから現地調査、実施計画策定、お客様との調整も行いました。例えば、騒音対策については、事前に技術部門が騒音の大きさをヒアリングし、騒音計算を実施。どのようにすれば、法的に満足できるか。技術部門と連携し検討を重ねました。別の試験所で顕在化している課題についても調査を行い、チームで共有することにより、より良い方法を模索しました。さらに要所要所で社内の第三者による検査を実施し、工事品質の向上にも努めました」。
導入後の成果
受託試験業務を止めることなく、納期内にリニューアルを完了
NECファシリティーズはチーム力を発揮し、さまざまな工夫を施しました。
まず騒音対策については、騒音の発生量と対策による消音計算を実施。マンションが隣接しているため、周波数帯域の仕様も確認しました。その上で吸音・遮音効果の高い材料や施工方法を選定し、複合振動試験の専用防音室を構築しました。


NECファシリティーズは半導体工場の建設に長年携わってきた実績があり、クリーンルーム等で培った特殊な環境構築の技術とノウハウを有しています。「この強みを活かし、さまざまな対策を講じることで、敷地境界において試験機の稼働中も稼働前と変わらない騒音値を実現。第一種住居地域の規制をクリアしました」とNECファシリティーズの水野 利治は述べます。
防音に加え、使い勝手にもこだわりました。防音室中央の大扉を天吊り方式にして可動性の高い構造を実現。扉枠をなくし、段差をなくすことで、お客様や試験員の安全性や試験品の搬出入などの作業効率も高めました。「女性の試験員でも搬入・搬出がしやすくなり、利便性向上にもつながっています」とエスペックの鈴木氏は評価します。
こうしたノウハウが活きたのは防音室だけではありません。複合振動試験機の排気にも工夫を凝らしました。排気はブロア(送風機)とダクトを通じて屋外に排出されますが、排気とともに騒音も発生してしまうため、屋外に排気用の消音対策を施しました。

さらに、その他試験エリアの改修工事、そして作業環境向上のための空調新設、照明のLED化、安全性確保のための排水管のドレンアップ、作業エリア美化のための余剰配線の整理と分電盤の整備、壁面の美装化なども実施しました。「これらの作業は複数ブロックに分け、段階的に施工を進めることで、既存設備の受託試験を停止することなく、新設備への入れ替えを実現しました」と水野は語ります。


こうして豊田試験所は予定通りリニューアルオープンしました。延床面積3000平方メートルを超える広大な試験スペースに、30種類以上の多様な最新試験設備を130台以上配置しています。「LV124規格の全試験項目に対応したワンストップサービスを提供する国内初の施設です」と浜野氏は強調します。国際試験所認定協力機構(ILAC)の国際相互承認協定(MRA)に対応したISO/IEC 17025試験所認定も取得しており、ISO 16750やISO 19453、メーカー各社の独自規格など幅広い試験規格に対応できます。

「受託試験業務を継続させながら大きな工事を期間内に完了できたのは、私たちの求めることをくみ取り、なおかつ当社側の試験工程管理者と密に連携し、工事進捗を徹底管理してくれたことが大きい。NECファシリティーズのチーム力と総合マネジメント力のおかげです」と浜野氏は評価します。
リニューアル後の見学会や開所式には100名近い顧客が訪れ、受託試験能力を高めた豊田試験所に大きな期待が寄せられています。「お客様には試験を依頼する上で施設を含めたアンケートをお願いしましたが、好意的な回答ばかりでした。試験所内がきれいになって作業がしやすいと現場の試験員にも好評です」(浜野氏)。
今回のプロジェクトはNECファシリティーズにとっても貴重な経験であり、新たなノウハウも蓄積できたといいます。「今後も、エスペック様の事業発展に貢献するとともに、これまでの経験・知見を最大限に発揮し、国際規格に対応した試験所や研究施設などの建設や特殊な環境構築に強いリニューアル事業者を目指していきたいと思っています」とNECファシリティーズの鈴木は展望を述べます。
少子高齢化が進む日本では、人材の確保がますます難しくなります。貴重な人材は本業に専念させたい。そう考える顧客が増えており、受託試験のニーズはさらに拡大する見込みです。一方で企業には、より厳しい環境管理が求められ、省エネ対策の強化は必須の取り組みとなっています。「時代の要請に応える新たな試験所の建設やリニューアルを考えるパートナーとして、これからもNECファシリティーズには大いに期待しています」(浜野氏)。エスペックは今回リニューアルした豊田試験所を中心に、各国・地域の試験規格への対応力を強化し、多様かつ高品質な試験サービスの提供を通じ、顧客の試験業務の効率化とグローバル展開に貢献していく構えです。
お客様プロフィール
エスペック株式会社
本社所在地 | 大阪市北区天神橋3-5-6 |
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創業 | 1947年(昭和22年)7月25日 |
設立 | 1954年(昭和29年)1月13日 |
資本金 | 6,895百万円(2019年3月31日現在) |
売上高 | 50,580百万円(2019年3月期) |
従業員数 | 連結1,520名(2019年3月31日現在) |
事業内容 | 先端技術の発展に欠かせない「環境試験器」を日本で初めて開発。環境試験器のほか、エナジーデバイス装置や半導体関連装置などをグローバルに提供する。機器・装置のレンタル、環境試験の受託試験サービスも展開。 |
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